閲覧注意! アジアの最恐発酵食品
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アジアには、強烈な香りと風味で思わず驚いてしまう発酵食品が数多く存在します。しかし先入観を捨てたその先では、各地で育まれた深い文化と知恵に触れることができます。
本記事では、韓国のホンオフェ、中国の臭豆腐、東南アジアの発酵ドリアン、インドネシアのバラチャン、フィリピンのバゴオン・イサウという5つの発酵食品を、歴史と科学の両面から掘り下げます。
韓国のホンオフェ(洪魚膾)- 世界第2位の悪臭発酵食品
ホンオフェは韓国南部、木浦地域で愛される発酵食品です。それは、強烈な香りから「世界第2位の悪臭発酵食品」とも呼ばれます。その背景には、この地域の海洋文化と現代科学が解明した発酵メカニズムがあります。

朝鮮半島南部の海洋文化と保存技術の発達
ホンオフェは全羅南道木浦地域で生まれました。この辺りは、黄海に面し豊富な海産物に恵まれた土地です。朝鮮王朝時代(1392〜1910年)の文献には、木浦港周辺でのガンギエイ漁の記録が残っています。これにより、当時すでに宮廷への献上品だったことがわかっています。
ガンギエイは尿素を多く含む軟骨魚類です。そのため、死後に尿素が分解されるとアンモニアを生成します。この強い臭いが雑菌の増殖を防ぎ、保存性を高めます。当時、全羅南道の湿潤な気候では干物作りが難しく、発酵という知恵が選ばれました。
このようにして、発酵技術は地域の食文化として根付きました。やがて、木浦では家庭でホンオフェを手作りすることも一般的となりました。さらに現在でも祭りや特別な日には、ホンオフェを囲んで祝う風習が残っています。
現代科学が解明したホンオフェの発酵メカニズム
現代の分析によって、ホンオフェの発酵では尿素が加水分解され最大8000〜10000ppmの高濃度アンモニアが生成されることが解明されました。測定された臭気値は6230Auに達し、シュールストレミングに次ぐ世界2位の悪臭食品として知られています。
この発酵プロセスにおいて、pHは9〜10の強アルカリ性になります。この特殊な環境が病原菌の増殖を抑え、生食を可能にします。同時に、筋肉繊維が分解されることで、独特の食感が生まれます。
伝統的な製法ではオガクズや藁を利用し、適切な温度管理のもとで発酵を進めます。このように、科学的な仕組みと伝統技術が融合し、ホンオフェは計算された発酵食品として今も愛されています。発酵のメカニズムについては、農林水産省の発酵解説(aff 2022年11月号)もあわせてご覧ください。
中国の臭豆腐(チョウドウフ)-千年の歴史を持つ発酵豆腐
臭豆腐は、香りと味で賛否が分かれる発酵食品です。しかし中国では千年以上前から愛されてきました。この、独特の風味を持つ臭豆腐の起源と今日まで受け継がれてきた背景を見ていきましょう。
宋朝時代の偶然の発見から始まった発酵技術
臭豆腐の起源は、宋朝時代(960〜1279年)の湖南省長沙とされています。豆腐商人の王致和が、余った豆腐を塩水に漬けたところ、独特の風味を持つ発酵豆腐ができたという逸話が知られています。この話は明朝・清朝の文献にも記載されています。
長沙地域は湿度が高く温暖な気候で、豆腐の腐敗が進みやすい一方、有用菌が活発に働く環境でした。やがて、商人たちは発酵による保存効果に気づき、技術は長江流域へと広まりました。その過程で、地域ごとに独自の製法も発展していったのです。
地域別発酵技術の発展と科学的メカニズム
湖南省の黒色臭豆腐は、黒豆や茨菇(クワイ)、冬筍(トウジュン)を使った発酵液に浸けて作られます。この発酵液は数十年から百年以上継ぎ足しながら使われ、独自の微生物の生態系を育みます。浙江省では紹興酒の酒糟を使う製法もあり、台湾では発酵期間を短く抑えるのが特徴です。そのため、臭みが少なく軽やかな香りに仕上がります。
科学的には、枯草菌や麹菌(アスペルギルス・オリゼ)など20種類以上の微生物が発酵に関与しています。これらの菌がタンパク質を分解し、旨味成分のアミノ酸を生成します。発酵中に生まれる硫黄化合物が、あの独特の臭いの正体です。
こうした伝統と科学的な背景を知ると、臭豆腐の魅力がより深く感じられます。また、この奥深いアジアの食文化を探る一品としてもおすすめです。

東南アジアの発酵ドリアン – 果物の王様が生む究極の発酵食品
「果物の王様」ドリアンは、強烈な香りで知られます。しかし発酵させることで、新たな味わいに生まれ変わります。それでは、マレー半島とインドネシアの伝統と発酵のメカニズムを見ていきましょう。
マレー半島とインドネシアの伝統的発酵技術
発酵ドリアンは、マレー半島、インドネシア、タイ南部で古くから作られてきました。収穫が集中する時期に、余剰分を発酵させて保存する技術が発展したのです。マレー語では「テンペ・ドリアン」と呼ばれ、14世紀のマジャパヒト王国時代から存在が確認されています。
製造工程はシンプルで、熟したドリアンの果肉を竹筒や葉で密閉し、常温で3〜7日間発酵させます。この間に天然酵母と乳酸菌が活動し、独特の酸味と旨味が生まれます。こうして完成したテンペ・ドリアンは、そのまま食べるほか、炒め物や調味料としても使われます。
マレー半島の先住民オラン・アスリ族は、長期移動の保存食としてこの発酵ドリアンを重宝しました。インドネシアのスマトラ島でもバタック族が、果肉を発酵させた「ドリアン・フェルメンタシ」を作り、オランダ植民地時代にもその技術が継承されています。
この竹筒は天然の抗菌容器として、外部からの雑菌を防ぎ長期保存を可能にしています。

科学的分析による発酵メカニズムの解明
ドリアンに含まれる硫黄化合物は、発酵によってジメチルジスルフィドやジメチルトリスルフィドへと変化し、生のドリアンを大きく上回る強烈な臭気を生みます。
発酵初期は酵母菌が糖分をアルコールに変え、中期には乳酸菌が優勢となり残った糖分を乳酸へ変化させます。そして後期には酢酸菌が活動し、酢酸やクエン酸などの有機酸を生成します。
また、発酵によってGABA(γ-アミノ酪酸)などの成分も生成され、鎮静効果や抗炎症作用が確認されています。そのため現地では「自然の薬」として大切にされています。
このように、発酵という工程を経て、ドリアンはまったく新しい食品に変わります。
インドネシアのバラチャン – 微小エビの発酵ペースト
バラチャンは、微小エビやオキアミを発酵させたペーストです。インドネシアでは「テラシ」、マレーシアでは「ブラチャン」とも呼ばれます。そのままでは強烈な香りを放ちますが、加熱すると料理に深いコクと旨味をもたらす、東南アジア料理の「縁の下の力持ち」的存在です。
群島国家インドネシアの海洋発酵文化
インドネシアは7100以上の島々からなる群島国家で、海洋資源を活かした発酵文化が育まれました。バラチャンの起源は7世紀のスリウィジャヤ王国時代とされ、当時から交易品として重視されていました。
製造はシンプルで、微小エビやオキアミを重量の20〜30%の塩と混ぜ、天日干しにしながら数日間攪拌します。その後、容器に詰めて数週間〜数か月発酵させ、固形のブロック状またはペースト状に仕上げます。
ジャワ島では小型のレボン海老を使い、約2〜4週間の短期発酵で仕上げます。そのため比較的マイルドな香りのペーストになります。スマトラ島では1〜3か月かけてじっくり発酵させるため、色が濃く旨味の凝縮された濃厚な風味が生まれます。スラウェシ島では地場の小エビや海産物を使うことで、ジャワ・スマトラとは一線を画す独自の風味が発展しています。
発酵による旨味成分の生成メカニズム
発酵初期には酵素の働きでタンパク質が分解され、グルタミン酸やアスパラギン酸などの旨味成分が生まれます。その後、乳酸菌や酢酸菌がpHを酸性に保ち、病原菌の増殖を抑制します。
発酵中期には枯草菌や麹菌(アスペルギルス・オリゼ)も活動し、さらなる風味成分を生成します。グルタミン酸は強烈な旨味の主要な源で、料理に深いコクを与えます。低脂肪・高タンパク質という特長もあり、健康面でも注目されています。
発酵食品のうま味成分については、うま味インフォメーションセンターの解説もあわせてご覧ください。
発酵によって生まれる旨味と栄養価が、バラチャンの最大の魅力です。
フィリピンのバゴオン・イサウ – 魚の内臓発酵食品
バゴオン・イサウは、魚の内臓を塩漬け発酵させたフィリピン伝統の調味料です。魚の身ではなく内臓を使うという独特の製法が、複雑な旨味と香りを生み出しています。
フィリピン群島の多様な発酵文化の発展
バゴオン・イサウの起源は、フィリピン北部のイロコス地方とされています。ここは南シナ海に面し、漁業が盛んな地域です。16世紀のスペイン植民地時代以前から、魚の内臓を発酵させる技術が使われていました。文献『ボクサー・コーデックス』にも、その記録が残っています。
イロコス地方ではアンチョビ類の内臓を塩のみで漬け込みます。発酵期間は1〜3か月が一般的で、短期ではマイルドな風味に、長期になるほど旨味が凝縮された濃厚な味わいになります。
ルソン島・ビサヤ・ミンダナオと島が変わるごとに使う魚の種類や副材料が異なり、それぞれ独自の風味が生まれています。
魚の内臓発酵による複雑な生化学反応
バゴオン・イサウの発酵では、内臓に含まれる消化酵素が初期に自己消化を促進し、タンパク質をペプチドへと分解します。中期には乳酸菌が糖分を乳酸に変換し、pHは5.0〜5.5に保たれ、病原菌の繁殖を抑えます。
後期には枯草菌などの微生物が活動し、アンモニア化合物や硫黄化合物が特有の香りを生み出します。バゴオン・イサウには20種類以上のアミノ酸と10種類以上の有機酸が含まれ、深い旨味と健康効果が期待されています。
強い香りの裏には、栄養価の高さと長い歴史が息づいています。

よくある質問|アジアの発酵食品について
Q1. アジアの発酵食品にはどんな種類がありますか?
韓国のホンオフェ、中国の臭豆腐、東南アジアの発酵ドリアン、インドネシアのバラチャン、フィリピンのバゴオン・イサウなど、各地の気候と食文化に根ざした多様な発酵食品が存在します。
Q2. なぜこれらの発酵食品は強い匂いがするのですか?
微生物による発酵過程で、アンモニア化合物や硫黄化合物、有機酸など揮発性の化合物が生成されるためです。これらの成分が複雑に混ざり合うことで、発酵食品特有の強烈な香りが生まれます。
Q3. 発酵食品の独特な匂いや味は体に害があるのですか?
適切な製法・保存方法で作られたものは安全に食べられ、栄養価が高く健康効果も期待できます。ただし衛生管理が不十分なものは食中毒のリスクがあるため、信頼できる製造元のものを選んでください。
Q4. 初めてアジアの発酵食品を食べるときの注意点は?
まずは少量から試し、加熱調理されたものや、調味料として少量使うレシピから挑戦するのがおすすめです。匂いに慣れていない場合は、他の食材と組み合わせることで食べやすくなります。
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