体調を内側から整える知恵|腸と発酵が免疫力を支える鍵|インフルエンザ対策に味噌の力

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秋なき冬、広がるインフルエンザ――味噌と発酵が守る腸と免疫

#インフルエンザ#免疫#冬の健康#味噌#発酵食品#腸ケア#腸内細菌

秋なき冬がもたらす身体の乱れ

今年も去年同様、秋を感じる間もなく冬が到来し、気温の急変が例年に比べて顕著です。2025年の秋は気温の変動が激しく、特に10月に入ってからの寒暖差が大きくなっています。このような気温の乱高下は、体感だけでなく私たちの自律神経や免疫機能に深い影響を及ぼします。

人間の身体は本来、段階的な季節の移り変わりに適応するようにできています。しかし「秋が短い」現象は、身体が寒さへの準備を整える猶予期間を奪います。さらに、例年よりも早くインフルエンザが流行している今、「体調を内側から整える知恵」を改めて見直す必要があります。その鍵を握るのが、”腸”と”発酵”の関係です。

「白いトップスとグレーのパンツを着た人物が、両手を下腹部に当てている。腹部にはオレンジ色の光が差し、腸の不調や内側からの体調管理の重要性を示している。」

季節の短縮と気温変化が与える自律神経・免疫への影響

気温の急変は、自律神経のバランスを崩し、免疫細胞の働きにも影響を与えます。特に「秋が短く、冬が早く来る」気候では、身体が寒暖差に対応しきれず、交感神経と副交感神経の切り替えが乱れがちです。

急激な気温低下は交感神経を優位にし、血管を収縮させます。これにより消化器官への血流が減少し、腸の蠕動運動が低下、腸内環境にも影響が出やすくなります。

東京大学先端科学技術研究センターの報告では、腸内細菌叢のバランスが気温変化やストレスで短期間に変動し、それが免疫応答に直結する可能性が示唆されています。順天堂大学医学部の2023年調査では、気温の日較差が10度以上続くと、体調不良を訴える人が約1.8倍に増加し、特に消化器系の不調が顕著に増えることが報告されています。

こうした気候変動に対して、私たちは「腸・免疫・発酵食品」という視点から備えておく価値があります。

早期に流行するインフルエンザと腸内環境の関係

2025年は、例年よりも早い時期からインフルエンザの流行が始まっています。厚生労働省の発表によると、2025年9月22日〜28日(第39週)の時点で、全国の定点当たり報告数が1.00を超え、全国的な「流行シーズン入り」とされました。この流行入りのタイミングは、過去20年で2番目に早い記録です。10月に入ってからは、都市部を中心に報告数が急増し、学級閉鎖が相次ぐなど、感染拡大のスピードが例年を上回る異例の状況となっています。

腸は全免疫細胞の約70%が集まる「最大の免疫器官」です。腸管の「パイエル板」で免疫細胞が訓練され、全身へと送り出されます。

理化学研究所免疫システム研究センターの研究では、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が制御性T細胞の分化を促進し、ウイルス感染に対する防御力を高めることが明らかになっています。慶應義塾大学医学部の2022年研究では、腸内細菌叢の多様性が高い人ほど、インフルエンザワクチンの効果が高いという相関も示されています。

逆に、腸内環境が乱れると防御力が低下します。気温の急変は自律神経を介して腸機能に影響を与えるため、「気候変動→自律神経の乱れ→腸内環境の悪化→免疫力低下→感染リスク増加」という負のスパイラルが生じやすくなります。

今年のように「秋が短く」「冬が早く・寒暖差が激しい」年には、特に腸ケアを優先すべきです。その最も身近な方法が、日本の伝統的な発酵食品、とりわけ味噌の活用なのです。

味噌と発酵が導く”整う力”の科学

発酵食品として日本の食卓に欠かせない味噌は、古くから「体を温め、整える食」として親しまれてきました。江戸時代の『養生訓』(貝原益軒著、1713年)には、「味噌は毎日食すべし。腹を温め、気を補う」という記述があります。

現代の発酵研究から見ると、この伝統には確かな科学的根拠があります。味噌に含まれる麹菌や乳酸菌は腸内環境を整え、免疫細胞の活性をサポートします。発酵過程で生成される生理活性物質が、抗酸化、抗炎症、血圧調整など、多面的な健康効果をもたらします。

「ウイルスのような粒子に対して手を差し出し、防御するようなポーズをとる人物のシルエット。手のひらには光が差し、免疫反応やウイルス防御を象徴している。」

味噌に含まれる乳酸菌・麹菌の免疫調整メカニズム

味噌の発酵過程では、麹菌(Aspergillus oryzae)と乳酸菌が共存し、多様な有益な代謝産物を生成します。麹菌は原料のデンプンやタンパク質を分解する酵素を産生し、糖やアミノ酸が生成されます。乳酸菌は糖を乳酸に変換してpHを下げ、腐敗菌の繁殖を抑制します。

これらの菌は腸内で善玉菌優位の環境をつくり、腸上皮のバリア機能を高め、免疫バランスを整えます。

京都府立大学大学院生命環境科学研究科(2022年)の研究では、味噌由来乳酸菌が腸上皮細胞でIgA(分泌型免疫グロブリンA)抗体の産生を促進し、ウイルス感染に対する防御力を高める可能性が示されています。IgA抗体は粘膜面で病原体の侵入を防ぐ「第一防衛線」として機能します。インフルエンザウイルスは主に鼻や喉の粘膜から侵入するため、IgA抗体の産生を高めることは感染予防に極めて重要です。

長野県味噌研究所(2020年)の報告では、12か月以上熟成させた味噌を8週間継続摂取したグループで、血中の酪酸濃度が約1.6倍に増加し、炎症性サイトカインの値が有意に低下しました。

さらに、東京大学大学院農学生命科学研究科の研究では、加熱処理した味噌でも免疫細胞の活性化が観察されています。これは死んだ菌体成分も免疫調整作用を持つためです。重要なのは、「生きた菌」だけでなく「発酵由来の多様な成分」全体が、複合的に身体に働きかけるという点です。

寒暖差や食生活の乱れによってダメージを受けやすいこの時期、味噌を定期的に摂ることは「腸・免疫の土台」をつくる意味でも有効です。

白い制服と帽子を着た職人が、巨大な樽に入った味噌の表面にシートをかぶせている。背景には業務用の調理設備が並び、味噌蔵での作業風景が映っている。」

熟成中の味噌

発酵によるアミノ酸とペプチド――身体を支える栄養シナジー

発酵が進むことで、味噌中のタンパク質は麹菌の酵素によって分解され、グルタミン酸や各種ペプチド(アミノ酸が数個つながった短鎖化合物)へと変化します。これらの成分は旨味を増すだけでなく、抗酸化・抗炎症作用を持ち、身体の恒常性を支えます。

広島大学大学院先端物質科学研究科(2021年)の研究では、味噌発酵過程で生成された特定ペプチドがマクロファージの炎症反応を抑制する作用を示すことが確認されました。マクロファージは病原体を貪食する免疫細胞ですが、過剰に活性化すると組織損傷を引き起こします。味噌由来ペプチドは、この過剰な活性化を抑制し、適切な免疫応答を維持します。

信州大学農学部(2019年)の報告では、熟成味噌の摂取がビタミンB群やミネラルの吸収効率を高めることが示されています。これは発酵によって抗栄養因子(ミネラルの吸収を阻害する成分)が分解されることや、アミノ酸やペプチドがミネラルと結合して吸収されやすい形になるためです。

味噌に含まれる大豆イソフラボンも、発酵によって吸収されやすい「アグリコン型」に変換されます。東京農業大学の研究では、味噌を日常的に摂取する人は、血中の抗酸化指標が有意に高いという結果が得られています。

寒暖差が激しく、体調が揺らぎやすい季節にこそ、この”発酵 × 栄養”の相乗効果が味方になります。

冬に備える味噌習慣――腸と免疫を守る食卓へ

発酵の力を活かすためには、特別なサプリメントではなく、「続けられる日常の習慣」に落とし込むことが大切です。日本人の食卓に長く根付く味噌汁は、そのまま”日常的な腸活・免疫ケア”の入り口になります。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2022年度)によれば、味噌汁を週4回以上食べる人の割合は年々減少しています。一方、味噌汁を毎日飲む習慣のある高齢者層は、そうでない層と比較して要介護認定率が低く、認知機能の維持にも関連があることが複数の疫学研究で示されています。

朝の味噌汁で腸を温め、体内時計をリセット

冷え込みが強まる季節には、朝の一杯の味噌汁が胃腸を温め、血流を促し、自律神経の切り替えをスムーズにしてくれます。体温が1度下がると免疫力は約30%低下すると言われており、特に朝は体温が最も低い時間帯です。

国立健康・栄養研究所の2023年調査では、「朝食に温かい汁物を摂ることで腸の蠕動が活発になり、体内時計のズレが軽減される」という結果が出ています。体内時計は睡眠・覚醒だけでなく、免疫機能の日内変動にも関与しており、朝食による「時計遺伝子」のリセットは重要です。

味噌汁に豆腐・野菜・海藻を加えることで、食物繊維やたんぱく質を補い、腸内細菌のエサとなる”プレバイオティクス”も同時に摂取できます。特に根菜類や海藻類は水溶性食物繊維が豊富で、短鎖脂肪酸の生成を促進します。きのこ類はβ-グルカンを含み、免疫細胞の活性化に寄与します。

味噌を溶き入れるタイミングは「火を止めてから」が理想的です。 沸騰状態で味噌を入れると、酵素や香気成分が失われます。具材を煮た後、90度前後まで温度が下がってから味噌を溶き入れることで、風味も栄養価も最大限に保てます。

東京慈恵会医科大学の2021年調査では、「1日1杯以上の味噌汁を摂取する人は、冬季の風邪罹患率が約40%低い」という結果が報告されています。特に朝食時の味噌汁摂取が最も相関が高く、「朝の温かい発酵食品」が一日の免疫機能の維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆されました。

また、味噌汁に生姜やにんにくを加えることで、さらなる相乗効果が期待できます。生姜のジンゲロールやショウガオールは体を温める作用に加えて抗炎症・抗酸化作用を持ち、にんにくのアリシンは免疫細胞の活性化を促します。

朝の習慣に「味噌汁+ひと品」を取り入れて、腸・免疫の準備を整えましょう。 忙しい朝でも、まずは「週3回」から始めることをお勧めします。

「木製のテーブルに並べられた和朝食セット。中央に味噌汁、左に白ごはん、奥に納豆、右に焼き鮭と大根おろし、手前には箸が置かれている。発酵食品を含む、栄養バランスのとれた日本の伝統的な朝食。」

発酵食品の重ねづけ――味噌×ヨーグルト×納豆の相乗効果

味噌だけではなく、ヨーグルト・納豆・ぬか漬けなどの発酵食品を”重ねて”摂ることで、腸内に多様な菌種を取り入れることができます。腸内には約1000種類、100兆個以上の細菌が生息しており、その多様性が高いほど、免疫機能や代謝機能が安定します。

東京農業大学応用生物科学部(2020年)の研究では、「複数の発酵食品を並行して摂取するグループは、単一摂取グループより腸内細菌の多様性指数(シャノン指数)が約1.4倍高かった」と報告されています。味噌・ヨーグルト・納豆の3種を毎日摂取したグループでは、ビフィズス菌属、ラクトバチルス属、酪酸産生菌の割合が有意に増加し、便通の改善、血中炎症マーカーの低下が確認されました。

特に、植物性菌(味噌、ぬか漬け、納豆)と動物性菌(ヨーグルト)の共存は、腸内での短鎖脂肪酸生成を促進し、免疫細胞の活性化を助けます。植物性乳酸菌は胃酸に強く、生きたまま腸に届きやすく、動物性乳酸菌は小腸上部で働き、腸管バリア機能を強化します。

納豆菌(バチルス・サブチリス)は芽胞を形成するため胃酸や熱に非常に強く、ほぼ確実に生きたまま腸に到達します。納豆菌は腸内で乳酸菌の増殖を助ける作用があり、「味噌汁の乳酸菌」と「納豆の納豆菌」を同じ食卓で摂ることは菌同士の相互作用という点でも理にかなっています。

国立がん研究センターの大規模コホート研究(2020年)では、「発酵性大豆食品(味噌、納豆)の摂取量が多いグループは、循環器疾患や全死亡リスクが約10%低い」という結果が報告されています。特に味噌汁を1日2杯以上、納豆を週3〜4回以上摂取する習慣のある人で、最も顕著なリスク低下が見られました。

実践的な「発酵食品の重ねづけ」プラン

  • 朝食: 味噌汁(豆腐・わかめ) + 納豆ご飯 + ぬか漬け
  • 昼食: 味噌ドレッシングのサラダ + ヨーグルト
  • 夕食: 豚肉と根菜の味噌炒め + キムチ + 雑穀ご飯

味噌を「汁物」だけでなく「調味料」として活用することで、無理なく摂取量を増やせます。味噌ドレッシング(味噌+オリーブオイル+酢+はちみつ)、味噌マヨネーズなど、洋風食材との組み合わせも相性が良く、料理のレパートリーを広げることができます。

寒暖差とウイルス流行が早まる今年、発酵食品の”重ねづけ”は、身近な日常による実践的な免疫対策と言えるでしょう。サプリメントに頼る前に、まず食卓から。 それが、日本人が数千年かけて培ってきた「発酵文化」の本質なのです。


多様な発酵食品を日々の食卓に並べる習慣化を。琉樹商店の調理味噌が、あなたの腸活・免疫ケアをサポートします。

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